日本の市場が成熟し、少子高齢化による国内需要の縮小が叫ばれる中、
「海外展開」を検討する企業様が増えています。新たな販路を開拓し、
事業を永続的に成長させるためには、海外市場への進出は非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
しかし、「海外展開」と一口に言っても、その方法は様々です。
どのモデルが自社に合っているのか、それぞれのメリット・デメリットは何なのか、
判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
今回の記事では、海外展開の主なモデルを3つご紹介し、
それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較解説します。
自社に最適な海外展開の第一歩を踏み出すためのヒントになれば幸いです。

海外展開の主な3つのモデル
海外展開の方法は、主に以下の3つに分けられます。
- 国内販売(商社経由)
- 輸出販売(海外販売パートナーとの直接取引)
- 海外拠点設立(現地法人等)
また、最近ではインターネットの普及により、EC(電子商取引)を
活用した海外販売も一般的になっています。EC販売は、上記のモデルと組み合わせて行うことも、
単独で行うことも可能です。今回はEC販売も独立したモデルとして扱い、合計4つの方法を比較してみましょう。
スライドで提示されている内容を元に、各モデルの詳細を見ていきましょう。
モデル1:国内販売(商社経由)
【海外向け、国内取引】
これは、日本の商社などの仲介業者を介して海外に商品を販売する方法です。御社は日本の商社と国内で取引を行い、商社が御社の代わりに海外の販路を開拓したり、輸出入の手続き、現地での販売業務などを行います。
- メリット:
- 自社の手間が省ける
- 海外ビジネスのリスクを商社が負ってくれる
- デメリット:
- 中間業者(商社)が入るため、利益率が低くなる
- 海外ビジネスに関するノウハウが自社に溜まりにくい
- 海外ビジネスの進捗や戦略が他社(商社)頼りになりやすい
【こんな企業様におすすめ】
- 海外展開の経験がなく、まずはリスクを最小限に抑えたい
- 海外ビジネスに割ける自社のリソース(人材・時間)が限られている
モデル2:EC販売
【ECプラットフォーム販売】
これは、インターネット上のECサイトを通じて直接海外の顧客に商品を販売する方法です。eBay、Shopifyなどの海外向けECプラットフォームを利用したり、自社のECサイトを多言語化して海外からアクセスできるようにしたりするケースがあります。BtoB向けのECプラットフォーム(Alibabaなど)を活用する方法もあります。
- メリット:
- 国内にいながら、比較的気軽に全世界(またはターゲット市場)へアクセスできる
- 初期費用や運用コストを抑えられる場合が多い
- デメリット:
- 海外には既に多くの競合がいるため、自社の商品・製品が顧客に「知られる」ための工夫(広告、SEO対策など)が必要
- ECサイトの管理、海外からの問い合わせ対応、発送手続きなど、自社で行うべき業務が発生する
- サイトの利用手数料や広告費など、コストが積み重なる可能性がある
【こんな企業様におすすめ】
- まずは手軽に海外市場の反応を見たい
- 自社ブランドの認知度を世界的に高めたい
- 直接個人の消費者と取引したい(BtoCの場合)
※文字起こしで、EC販売のデメリットとして「数年で撤退することが散見される」と
述べられているのは、単にサイトに載せるだけでなく、知ってもらうための努力が不可欠である点を物語っています。
モデル3:輸出販売(海外販売パートナーとの直接取引)
【海外販売パートナーとの直接取引】
これは、海外の特定の国や地域にいる販売代理店や卸売業者などの
「販売パートナー」と直接契約を結び、そのパートナーを通じて現地の顧客に商品を販売する方法です。
商社を介さず、御社自身が海外のパートナーと直接交渉し、取引を行います。
- メリット:
- 中間マージンがないため、国内販売(商社経由)に比べて利益率が高くなる可能性が高い
- 海外ビジネスに関する実践的なノウハウ(契約交渉、パートナー選定、現地市場の理解など)が自社に溜まっていく
- デメリット:
- 海外人材の確保(または育成)が必要になる
- マーケットリサーチや海外出張など、販路開拓に時間と投資が必要
- 製品・商品の仕様を現地市場に合わせて調整する必要がある
- 海外パートナーの発掘・選定、契約締結、顧客管理・販売活動のサポート、
入金管理・リスクヘッジ、貿易実務の把握など、多岐にわたる業務と労力が発生する
【こんな企業様におすすめ】
- 海外ビジネスのノウハウを自社に蓄積したい
- 利益率を重視し、主体的に海外市場を開拓したい
- 特定の国や地域に根ざした販売網を構築したい
※文字起こしで「長い目で事業を育てていくといった感覚が必要になってきます」と
述べられているように、このモデルは成果が出るまでに時間と労力がかかりますが、
自社の力で海外ビジネスを構築していく上で重要なステップです。
モデル4:海外拠点設立(現地法人等)
【現地法人設立の場合】
これは、海外の特定の国や地域に現地法人や支店、営業所などを設立し、
自社の社員を派遣したり現地で雇用したりして、販売から運営まで全てを自社で行う方法です。
- メリット:
- 顧客との距離が最も近くなり、現地のニーズをきめ細かく拾い上げられる
- 海外ビジネスの拡大を最も積極的に、自社のコントロール下で進められる
- デメリット:
- 設立手続きや法務・税務、労務環境の整備など、多くの専門知識と労力が必要
- 人材の採用・育成、給与支払いなど、運用コストが非常に大きい
- 事業計画、収支計画、営業体制、アフターサービス体制、技術指導など、事業運営全般にわたる準備と実行が必要
- 大きな投資が必要となり、リスクも最も大きい
【こんな企業様におすすめ】
- 特定の市場でシェア獲得やブランド確立など、本格的な事業展開を目指す
- 現地に根ざしたサービス提供や、きめ細やかな顧客対応が必要
- 十分な資金力と、海外事業を推進できる体制がある
自社に最適な海外展開モデルを選ぶために
ご紹介した通り、海外展開には様々なモデルがあり、
それぞれに異なるメリットとデメリットがあります。
どのモデルを選ぶかは、自社の状況と目的に応じて慎重に検討する必要があります。
選定のポイント:
- 海外展開の目的: 何のために海外展開をするのか?
(例:永続的な経営のために需要を取り込む、ブランド認知度向上、特定市場でのシェア獲得など) - 自社のリソース: 資金、人材、海外ビジネスに関するノウハウはどの程度あるか?
- リスク許容度: どの程度のリスクまで許容できるか?
- スピード vs ノウハウ蓄積: 短期的な成果を優先するか、長期的な成長を見据えて自社にノウハウを蓄積したいか?
例えば、「まずは海外市場の反応を見てみたい」「手軽に世界中にアプローチしたい」ということであれば、
EC販売から始めてみるのが良いかもしれません。
「ある程度の利益率を確保しつつ、自社でノウハウを蓄積したい」
「特定の有力なパートナーと組んで市場を開拓したい」ということであれば、
輸出販売が適しているでしょう。
特に、商品の性質上、現地の販売網やサポートが重要になるケースでは有効です。
「特定市場で本格的に事業を展開し、顧客との関係を密にしながらシェアを獲得したい」
といった強い目的と豊富なリソースがあるのであれば、海外拠点設立も選択肢に入ります。
また、いきなり一つのモデルに絞るのではなく、EC販売で市場の反応を見ながら、
有望な地域で販売パートナーを探す、といった段階的なアプローチも有効です。
まとめ
海外展開は、国内市場の飽和に直面する多くの日本企業にとって、
将来の成長をかけた重要な戦略です。今回ご紹介したように、
様々な展開モデルが存在し、それぞれにメリットとデメリットがあります。
単に「海外で売りたい」だけでなく、「どのように売りたいのか」
「海外ビジネスを通じて何を達成したいのか」といった自社の目的や、
現在のリソースをしっかりと把握することが、最適なモデル選びの第一歩となります。
特に、長期的な視点で会社の永続的な経営を考えるのであれば、
海外ビジネスのノウハウを自社に蓄積できる「輸出販売(直接取引)」や「海外拠点設立」
といったモデルを育てていくことも視野に入れるべきでしょう。
海外展開は決して容易な道のりではありませんが、しっかりと準備し、
自社に合ったモデルを選び、粘り強く取り組むことで、新たな成長の機会を掴むことができるはずです。