vol.137 中小企業向け海外マーケットリサーチ①需要調査〜そこに狙うマーケットはありますか?〜

みなさん、こんにちは。
今回は「需要調査(釣堀と魚の特定)」について、実務でどう進めるかを解説します。

海外市場に進出するとき、まず確認すべきは「その市場にどれくらい需要があるのか」。
つまり、「魚がたくさんいる池なのか」を調べることから始めます。

需要の洗い出しイメージ

スライドの左側にある図をご覧ください。
まずは大きなマーケット全体を把握し、そこからターゲット層を絞り込んでいきます。

  • 市場全体(母数)
  • ターゲット層
  • 購入頻度や供給量
  • 競合とのシェア

こうした要素を順番に落とし込むことで、最終的に「現実的に狙える売上ボリューム」が見えてきます。

消費財メーカーの例

例えば日用品メーカーの場合です。

  1. 総人口を調べる
  2. その中で購買力を持つ層を特定する
  3. 年間購入頻度を推定する
  4. 競合のシェアを見積もる
  5. そこから売上金額を算出する

具体的には、人口統計は政府の統計局や国際機関のデータを活用できます。
また、消費習慣や購入頻度は、現地の市場調査レポートやディストリビューターへのヒアリングが役立ちます。

生産財メーカーの例

一方で、建築資材や機械部品といった 生産財メーカー の場合は、切り口が違います。

ここでは「消費」ではなく「生産量」から需要を割り出します。

  1. 住宅着工数や工場建設数などの生産規模を調べる
  2. ターゲットとなる需要層(例:高級住宅や特定産業)を特定する
  3. 競合や供給量を調べる
  4. 自社が取り得るシェアを推定する

この情報は、現地の業界団体、建設許可の統計、あるいは商社や工業会の情報から入手できます。

データ収集の実務ポイント

では、実際にどうやって情報を集めるのか。ポイントは大きく3つです。

  1. 公的データ
    政府統計局、国際機関(IMF、世界銀行、国連データ)、JETROの調査など。信頼性が高い。
  2. 民間調査・業界レポート
    民間の調査会社やシンクタンク、コンサル会社のレポート。費用はかかるが最新動向を把握できる。
  3. 現地ヒアリング
    ディストリビューター、小売店、業界団体に直接聞く。机上の数字だけでなく、生の声が得られる。

この3つを組み合わせて精度を高めることが重要です。

まとめ

需要調査の流れをまとめると、

  1. 市場の母数を把握する
  2. ターゲット層を絞り込む
  3. 購入頻度や供給量を考慮する
  4. 競合シェアを踏まえて売上を算出する
  5. そのために、公的データ・民間調査・現地ヒアリングを活用する

こうしたステップを踏むことで、「この池に魚がどれくらいいて、自分はどのくらい釣れるのか」を数字で見える化できます。

以上、「需要調査(釣堀と魚の特定)」の実務的な進め方を解説しました。
海外展開を検討される際には、ぜひ机上の数字と現地の声の両方を組み合わせて、
確度の高い市場判断につなげていただければと思います。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

社外海外部長・社外COO
海外ビジネスの最大化、ドンブリ経営からの脱却を目指していきませんか?
20年にわたり海外ビジネスに携わり、2度の東南アジア駐在を経験。海外営業マンとして海外の最前線で活躍し、30カ国以上計100社以上の海外企業との販売取引を実現。
また海外現地法人の責任者として外国人組織をリード。会社経営の最適化と事業の活性化に注力。

これらの経験から2023年3月に独立し、GC COMMUNICASTIONSを開業。2025年法人成りし、Atari Consulting株式会社を創立。クライアント企業の内側から、社外海外部長・社外COOとしてコンサルティング支援中。

屋号:Atari Consulting株式会社
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