
海外展開では、「ディストリビューターと契約できたら販売は任せればよい」と考えられることがあります。
しかし、実際にはディストリビューターとの契約はゴールではなく、本当のスタートです。
その後に重要になるのは、ディストリビューターと協力しながら、その先にいるリテーラー(販売店)や整備工場へどのように製品の価値を伝え、市場を育てていくかという取り組みです。
今回は、その有効な施策の一つである**「技術講習・安全講習」**について、私自身のASEANでの経験を交えながらご紹介します。
技術講習は「使い方説明」だけではない
技術講習というと、
「商品の使い方を説明する場」
というイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、本来の目的はそれだけではありません。
メーカーだからこそ提供できる技術やノウハウを現地へ届け、
- 製品の特長を正しく理解してもらう
- 他社製品との違いを伝えられるようにする
- 安全で正しい取り扱い方法を習得してもらう
ことで、販売店や現場スタッフが自信を持って提案・使用できる環境をつくることにあります。
ベトナムで50店舗以上の技術講習を実施
私が自動車部品メーカーでベトナム営業を担当していた頃は、ディストリビューターとともに北部・中部・南部を飛び回り、その顧客である自動車板金工場を50店舗以上訪問し、技術講習を実施しました。
現場では、多くのリテーラーからこんな相談を受けました。
「この製品は他社製品と何が違うのか、お客様へうまく説明できません。」
そこで、必要に応じて技術者にも同行してもらい、実際に製品を使用するワーカーの皆さんへ、
- 製品の特長
- 他社製品との違い
- 正しい使用方法
- 市場に流通する偽造品との見分け方
などを、実演を交えながら分かりやすく説明しました。
こうした講習を続けることで、リテーラーの製品知識や提案力は着実に向上し、
「このメーカーは商品を売るだけでなく、現場までしっかりサポートしてくれる。」
という信頼を得ることができました。
安全講習は社会貢献にもつながる
ホーチミンでは、タクシー会社を対象とした安全講習や整備講習も実施しました。
当時は古い設備を使用している会社も多く、安全面に課題を抱えている現場も少なくありませんでした。
そこで社会貢献活動の一環として整備設備を寄贈し、安全な整備方法や工具の正しい使い方について講習を行いました。
一見すると、このような活動は売上に直結しないように思えるかもしれません。
しかし実際には、
- 「今度こんな案件があります。」
- 「別の工場も紹介したい。」
といった相談や紹介につながるケースが数多くありました。
海外では、このような信頼の積み重ねが、新たなビジネスを生み出していくのです。
メーカーの役割は「ディストリビューターを成功させること」
私は、
「ディストリビューターの売上が伸びる施策を支援することも、メーカーの重要な役割」
だと考えています。
メーカーが前面に出て販売するのではなく、現地パートナーであるディストリビューターの立場を尊重しながら、一緒に市場を育てていくことが大切です。
そうすることで、
- ディストリビューターからの信頼
- リテーラーからの信頼
- エンドユーザーからの信頼
という三つの信頼が積み重なり、長期的な販売につながっていきます。
技術・教育・安全も「商品の価値」
海外営業で成果を上げている企業は、単に製品を販売している会社ではありません。
- 技術指導
- 教育
- 安全への取り組み
- アフターサポート
まで含めて価値を提供しています。
海外では価格だけでメーカーを選ぶ企業ばかりではありません。
むしろ、
- 「教育までしてくれる会社」
- 「導入後もしっかりサポートしてくれる会社」
- 「現場を理解し、一緒に課題を解決してくれる会社」
という評価が、競合との差別化につながります。
つまり、技術講習や安全講習そのものが営業活動であり、マーケティング活動でもあるのです。
まとめ
海外営業は、製品を販売することだけが仕事ではありません。
ディストリビューターや販売店の知識・技術・提案力を高め、市場そのものを育てていくことが、継続的な売上につながります。
技術講習や安全講習は、そのための非常に効果的な販促活動です。
現場で信頼を積み重ねることが、やがて新たな商談や紹介につながり、価格競争に巻き込まれない強いブランドを築くことができます。
Atari Consultingでは、海外代理店向け技術講習、現場同行、安全セミナー、販売促進イベントなど、ディストリビューターと協力しながら、市場を育てる実践的な販促活動を支援しています。
海外営業は、「売る営業」ではなく、**「市場を育てる営業」**です。
この視点を持つことで、海外ビジネスの成果は大きく変わります。

