vol.154 ディストリビューター選定の失敗談|ASEANで学んだ海外営業の2つの教訓

海外展開では、「良いディストリビューターを見つければ売上は自然と伸びる」と考えられがちです。

しかし、ASEANで20年以上海外営業に携わってきた経験から言えるのは、それだけでは十分ではないということです。

本当に重要なのは、ディストリビューターが自社商品を「売りたくなる環境」をつくることです。

ディストリビューターの多くは、一社専属ではなく複数のメーカーやブランドを取り扱っています。そのため、どの商品を優先的に提案・販売するかは、メーカーの支援体制や販売のしやすさによって大きく変わります。

販売権を与えるだけでは、売上は伸びません。

商品知識の提供、営業同行、販促活動、安全指導、アフターサポートなどを通じて、「このメーカーの商品は売りやすい」と感じてもらえる仕組みづくりが欠かせません。

今回は、私自身がASEANで経験した2つの失敗事例をご紹介します。


失敗事例① ベトナム|ディストリビューターを増やしすぎた

当時の私は、

「ディストリビューターの数が多いほど販売機会も増え、売上も伸びるはずだ」

と考えていました。

そこで、同じ商圏内で6社のディストリビューターと契約し、一気に販売網を広げようとしました。

しかし、その結果は期待とは正反対でした。

市場規模に対して販売代理店が多すぎたため、同じ案件を取り合う状況が生まれ、価格競争が激化したのです。

価格競争が始まると利益率は低下し、ディストリビューターは営業活動へ十分な時間や人員を投資しなくなります。

さらに、

「どうせ他社が安く販売する」

という空気が市場全体に広がり、積極的な提案活動まで減少してしまいました。

結果として、メーカーもディストリビューターも利益を確保できず、誰も得をしない市場になってしまったのです。

この失敗から学んだこと

ディストリビューターは、多ければ良いというものではありません。

重要なのは、市場規模に合わせて適切な数の販売パートナーを選び、それぞれが十分な利益を確保しながら、安心して販売活動を続けられる環境をつくることです。

海外展開では、販売網を広げることよりも、「売り続けたい」と思える市場環境を設計することが成功への近道だと実感しました。


失敗事例② インドネシア|独占販売権を与えすぎた

ベトナムではディストリビューターを増やしすぎたことが失敗でした。

そこで今度は、その反対の方法を試しました。

現地でも有力な大手ディストリビューター1社へ販売を集約し、独占販売権を与えたのです。

当時は、

「大手企業なら営業力もあり、全国に販売網も持っている。独占販売権を与えれば積極的に販売してくれるだろう」

と考えていました。

しかし、結果は期待とは大きく異なりました。

競争相手がいなくなると、ディストリビューターは想像していたほど積極的に営業活動を行わなくなったのです。

複数のメーカーやブランドを扱う中で、利益率が高く販売しやすい商品が優先され、当社製品は次第に後回しになっていきました。

こちらから依頼しなければ顧客訪問も少なく、新規顧客の開拓も売上も、それまでとほとんど変わりませんでした。

「大手企業へ独占販売権を与えれば売上が伸びる」

という期待は、大きく裏切られる結果となりました。

この失敗から学んだこと

独占販売権を与えれば、自動的に販売してくれるわけではありません。

競争相手がいない環境では販売の優先順位が下がり、メーカーが期待するほど営業活動が行われないリスクがあります。

一方で、販売代理店を増やしすぎれば価格競争が起こり、逆に一社へ集約しすぎれば販売活動が停滞する可能性があります。

どちらも極端な戦略にはリスクがあるのです。


海外展開で重要なのは「販売体制の設計」

海外展開で重要なのは、

「ディストリビューターを何社にするか」ではありません。

市場規模や商圏、商品の特性、競合状況を踏まえながら、最適な販売体制を構築することです。

そして、ディストリビューターが継続して販売したくなる環境を整えることこそが、海外事業を成功へ導く重要なポイントです。

販売代理店は、契約すれば終わりではありません。

メーカーとディストリビューターが同じ方向を向き、継続的に市場を育てていく仕組みづくりが不可欠です。


まとめ

今回ご紹介した2つの失敗事例は、一見すると正反対のケースです。

  • ベトナムでは、販売代理店を増やしすぎて価格競争に陥った。
  • インドネシアでは、一社へ集約しすぎて販売活動が停滞した。

この経験から学んだことは、「販売代理店の数」に正解はないということです。

重要なのは、市場に合った販売体制を設計し、ディストリビューターが利益を確保しながら積極的に販売できる環境をつくることです。

Atari Consultingでは、ASEANで20年以上にわたる海外営業経験をもとに、ディストリビューター開拓だけでなく、販売戦略の立案、販売パートナーの選定、同行営業、販売体制の構築まで、一貫した実行支援を行っています。

海外展開をご検討中の企業様や、販売代理店は決まったものの思うように売上が伸びない企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

金子 浩二

金子 浩二

海外営業・経営改善支援コンサルタント
海外ビジネスの最大化、ドンブリ経営からの脱却を支援
20年の海外ビジネス経験。2度の東南アジア駐在。海外営業マンとして約30カ国100社の海外企業との取引実績。
海外現地法人の経営者として、外国人組織のマネジメント経験。

これらの経験から2023年3月に独立開業、2025年4月に法人成りし、Atari Consulting株式会社を創立。わかりやすさとていねいさを強みとし、熱量とスピード感を持ってクライアント企業の事業を前進させます。

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